「終末のワルキューレ」本誌 第42話のネタバレ解説。道場で他者と競い合うのではなく強者に敗北することを繰り返して、独り勝利への道筋を探求し続ける小次郎。
本誌 第42話「最強の敗者(2)」のネタバレ
「終末のワルキューレ」の概要
人類の誕生から700万年。万物の創造主である神々によって1000年に1度開かれていた「人類存亡会議」にて、進歩の兆しがない人類を見限った神々は人類に「終末」を与える決議を行った。かくして、天界が誇る最強神たちと、秘術「神器錬成」によって神器と化した戦乙女たちと共に戦う最強の人類「神殺しの13人」(エインヘリャル)による、13番勝負の幕が上がる。
前回 第41話のおさらい
・若かりし頃の佐々木小次郎
・すぐに勝負を諦めてしまう
・なぜ闘いを諦めるのか
・佐々木小次郎の本質
前回のネタバレはこちら
「終末のワルキューレ」本誌 第42話のネタバレ
自然の中の師
山に籠もった小次郎が木の枝にぶら下がり柿をかじっている前を、一匹のウサギが跳ねていく。
小次郎は空かさず枝から飛び降りて目を輝かせながらそのウサギを追いかける。
ウサギを横目に、そのウサギと同じように手をついて跳ねながら移動する小次郎。
そんな小次郎にウサギは慌てて逃げ出そうとするが小次郎は尚もウサギを追い続ける。
師は道場ではなく自然の中に……、それが小次郎の考え方であった。
小次郎に追い詰められたウサギは小高い崖から飛び降りるが、小次郎も勢い余ってその崖から飛んでしまう。
落下して崖下にあった木々に突っ込む小次郎。
崖をよじ登ってきた小次郎の手には先程のウサギが握られていた。
道場のアワやヒエだけではなく獣肉を食べて身体を作り上げる、これもまた小次郎の考える修行の一つだった。
小次郎の才
山の日が暮れて、小川の傍らで焚き火を起こし魚を焼いている小次郎。
彼が這いつくばるようにして観察していたのは、カエルとそれを狙うヘビとの対峙であった。舌をチロチロと揺らすヘビがカエルにジリジリとにじり寄る。
そしてヘビが大きく口を開けてカエルに食らいついたその瞬間、小次郎の背後から飛び出してきた鷹によってヘビは連れ去られてしまうのだった。
目の前で起こった一連の出来事に驚く小次郎。
空に浮かぶ月を目指すように飛び去る鷹を見て彼は目を輝かせる。
野生の獣に戦の呼吸を学ぶ、これも小次郎の修行であった。強者に対して敗北を重ねて、その度に勝利への道筋を独り探求する。
小次郎の才とは、そういうものであった。
そして半年ぶりに道場へと姿を現した小次郎。
別人のように発達した小次郎の体躯を見て景勝ら兄弟弟子たちは驚きで眼を見張る。
頭の中での立会
小次郎の成長を一目で感じ取った景勝は小次郎に立会を申し込む。
しかし頭の中での146回の立会の末すでに景勝を超えていると語る小次郎は、彼の申し出を頭を下げて断るのだった。
その言葉に激昂した景勝は木刀を振りかぶり、強引に立会を始めようとする。
次の瞬間、自らの身体が小次郎によって両断されているイメージを幻視する景勝。
現実においては小次郎は景勝に向かって手をかざしているだけであり、突然動きを止めてしまった景勝に動揺する道場生たち。
景勝は周りの目も構わずに床に伏して小次郎に「参りました」と宣言するのだった。
そして数年後……
景勝の土下座に小次郎が戸惑っていると、富田勢源が姿を現す。途端に目を輝かせて勢源に指南を乞う小次郎。
小次郎に何かを感じとった勢源は快く応じて、その実力を見せるのだった。
虎をも思わせる勢源の迫力を前に満面の笑みを見せる小次郎。
そして、この指南のあと小次郎はまた道場に姿を現さなくなった。
数年後、小次郎の元を尋ねる勢源。
薪を割っていた小次郎は地に膝を付き勢源に礼をする。
姿を見せなくなった小次郎を気にして訪ねてきたと言う勢源を家に招き入れてもてなそうとする小次郎。
この時すでに眼病によって失明していた勢源だが、小次郎の家に入るなり大きく目を見開くことになるのだった。
43話へと続く
43話のネタバレはこちら
準備中
42話の感想・考察
野生児タイプの佐々木小次郎
今回描かれた小次郎の過去によってわかったのは、終末のワルキューレの佐々木小次郎は野生児タイプの剣士ということです。
吉川英治の小説を始め、それをもとにした漫画バガボンドなどでも宮本武蔵を野生児として描き佐々木小次郎は洗練された剣士として描写されることが多いように思えます。
そこに来て、この終末のワルキューレの小次郎のキャラクターは新鮮で良い意味での驚きがありました。
生涯無勝の意味
前回の最強の敗者(1)冒頭で語られた、佐々木小次郎が生涯一度も勝ったことがなかったという言葉の意味がついに明かされましたね。
この小次郎は常に自分より強い剣士と立会い、そして独り勝利を探求して最強を目指し続ける。
佐々木小次郎が史実において殆ど記述がなく無名に近い存在である理由を上手く説明する素晴らしい設定だと思います。
こうなると佐々木小次郎の最後の敗北である宮本武蔵の決闘がどのように描かれるかも一層楽しみになってきます。
負けを認めるとすぐに降参して勝利への探求をする小次郎が武蔵と最後まで戦った理由とは何か?
それとも巌流島の決闘の全く別の真実が描かれるのか、続きが楽しみです。
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